瀬口隆志さん
下北沢在住。
「瀬口家カレー」/代表。
クラファンコミュニティ「COVERING FIRE」ファウンダー。
根回しができていないとほぼアウト
マイキ:
いきなりの質問ですが、クラウドファンディングを成功させるのに大事なことってなんですかね?
瀬口さん:
言えることは、根回しができていないとほぼアウトですよね。
「根回し」とは、クラウドファンディングを始める際、事前に周りの人に告知をして、支援をお願いすること
マイキ:
根回しって色々なやり方があるなと思っています。
瀬口家のカレーとか食べ物系は、イベントを開いて料理を食べてもらうのがわかりやすそう。
瀬口さん:
はい、瀬口家のカレーだとやっぱり食べてもらうのが一番いいじゃないですか。イベントでカレーを食べた人の30%くらいから支援をいただけています。
マイキ:
すごいですね。
瀬口さん:
あと、僕が所属しているHIU(堀江貴文イノベーション大学校)でクラウドファンディングってちょこちょこ行われるんですよね。
そこで、例えば格闘技の画像作ったりとか、お手伝いをしています。
お金は取っていないので、相手は代わりにカレーでお返ししようってなることもあります。
マイキ:
それって信用を集めていくという考えですね。
無料で価値を提供して、どこかのタイミングで、瀬口家のカレーへの支援としていつか返ってくる。
瀬口さん:
その他に根回しとして、次回クラウドファンディングを行う時は、始める前に最低50人に食わせる。
50人に食べさせないと始めないというやり方をするつもりです。
日本にある珍しいカレーという立ち位置を狙う
マイキ:
そういえば、クラウドファンディングで瀬口家のカレーをやる理由って?
瀬口さん:
瀬口家のカレーって、長期でみるとマネタイズできると思うんですよ。
今って、日本の食品を海外で売るのって難しいんですよね。
各国でルールががちがちで、特に水分含む食品を輸出するのは簡単ではありません。
でも、それがクリアになる時代が来ると予測しています。
マイキ:
全然知らなかったんですが、そうなんですね。
瀬口さん:
そしてカレーってインドのカレーよりもアメリカやヨーロッパではカレーライスが美味しいと認識されている人が多いんです。
たぶんインドカレーよりも日本のカレーライスの方がカレーとしての認識が強くなっていきます。
その時に、ハウスさんとか、エスビーさんのカレーが日本中に出回っている中で、ニッチな変なジャンルで瀬口家のカレーが日本にあるという立ち位置になりたい。
マイキ:
そのために、瀬口家のカレーを広めていくということですね。
瀬口さん:
ニッチなご当地カレーっていくつかあるんですが、シリーズ化しているところはほとんどないのでチャンスだと考えています。
マイキ:
瀬口家のカレーは何種類くらい作っていますか?
瀬口さん:
これまでは、キーマカレー(「超キーマ」)、スタンダードカレー(「普通のカレー」)、牛すじカレー(「ホームレスカレー」)です。
次、スリランカカレーは面白いから、カレーハンターさんという方と共同でやろうと思っています。
マイキ:
ほうほうほう。
瀬口さん:
ただ、スリランカカレーって4~5種類の具材が必要ですが、レトルトパックの中で何種類も入れるのは原価が異常に上がっちゃいます。
3種類入れた時点で原価が1200円くらい。
マイキ:
おっと、意外とかかる…。
瀬口さん:
あと、もう一つやりたいことがありまして、アパレルブランド「VANQUISH」の石川さんって知ってます?
マイキ:
すみません、ちょっとファッションには疎くて。
瀬口さん::
その方は「渋谷ハチカレー」というカレーを作っているのですが、彼のビジネスのあり方が興味深くて。
子供時代に、旅行行ったときに旅行先の地名が書かれたお土産を買って帰るじゃないですか。
ペナント(三角の旗)とかキーホルダーとか、旅行した証を残すためにパッとしないけど買って帰るって。
そこから、地域名を載せた商品は売れるって言っているんです。
マイキ:
あー、たしかにそうですよね。
瀬口さん:
「渋谷ハチカレー 」についても、渋谷に訪れてカレーをプレゼントするのってありということですよ。
それで、よく考えたら僕が暮らす下北沢に「下北沢カレー」って商品はないなと。
マイキ:
オシャレな街だから、近くに住んでいる人だけでなく、観光客も行きたがるって聞きますね。
瀬口さん:
そのまま「下北沢カレー 」で反発くらうのは嫌だから、「超下北沢カレー」にします笑
マイキ:
誰かが下北沢カレーを作っても、こっちは「超」ついてるから上だぞとも言えますよね。
支援されるコツはアドバイスをもらうこと
マイキ:
そもそもなんですけど、瀬口家のカレーのクラウドファンディングを始めた背景が知りたいです。
瀬口さん:
以前に下北沢のキャンプで妻が作ったキーマカレーを持っていったら、めちゃめちゃ人気があったんです。
それからゼプラスというバーでイベントした時に、同じキーマカレーを出したら盛り上がって。
最終的に、レトルトカレーにして商品化しようという話になりました。
マイキ:
それが始まりだったんですね。
瀬口さん:
イベントのメンバーが入っているFacebookグループにアイデア募集ってスレッドを立てて、何人かと話しながら進めていきました。
すぐ思いついたのが、他のクラウドファンディングを見たときに漫画を活用しているところがないからやろうと。
ギリギリのラインでドラゴンボールバクりてぇって。
マイキ:
ははは。
瀬口さん:
メンバー内の弁護士の方にもきちんと相談はしました。
「界王拳」って書いたら100%ダメだけど、髪の毛の色変わるだけだったらゲームでもあるから大丈夫とか。
それで、これならいけるっていうところでGOしました。
マイキ:
権利関係もチェックしていたわけですね。
瀬口さん:
それと、コマ割りやシーンを何度か皆に見せて、感想聞きながら2~3回更新して完成させました。
あるあるですけど、アドバイスを頻繁にしてくれる人は支援者になってくれました。
マイキ:
あー、それって巻き込んでる感ですよね。
作られる過程で参加して、アドバイスしたら、そのあとの結果って普通気になりますし、愛着湧くから支援もしたくなります。
事前準備の段階で一緒に作っていくというのも一つの成功の秘訣なんだろうな。
瀬口さん:
そう考えたら「普通のカレー」とか「ホームレスカレー」の企画ってすんなりやっちゃってるんですよ。
意見を募集したんですが、最初に瀬口家のカレーを作った時のような盛り上がり方はしなくて。
マイキ:
完全性じゃないですけど、人って出来上がっているものより、未熟なものをサポートしたいと思うじゃないですか。
わかりやすいのは赤ちゃんで、やっぱ弱いから、みんな可愛がるし、助けてしまう。
瀬口家のカレーは基本的に出来上がってるから、「この人は自分が助けなくても大丈夫そう」と思われちゃうのかな。
瀬口さん:
言われて気づきました、それありますね。
そうえいば、「瀬口さんより若くて、お金を持っていない人を支援したい」って言われたことありました。
マイキ:
だから、挑戦のハードルを上げるのが良いかもしれませんね。
瀬口さん:
えっ、たとえば?
マイキ:
アイドル系のクラウドファンディングで、投票を支援という形で行なって、誰がアイドルで一番かというのを競うのがあったと思います。
瀬口さん:
AKB商法ですね。
マイキ:
カレーも多くのお店があるので、その中で「瀬口家のカレー」 VS 「●●のカレー」という対立構造を作る。
瀬口さん:
カレー屋さんを巻き込めって話ですか。
マイキ:
カレー系のプロジェクトも最近増えているので、彼らを巻き込んで共に拡散して、競って、応援してもらうという方法です。
瀬口さん:
もしやるなら相手に知名度があって、僕が勝てるかわからない相手と闘いたいですね。
とりあえずやってみたら?でも一人きりじゃダメ。
マイキ:
最後に、プロジェクトを考えている人に一言お願いします。
瀬口さん:
とりあえずやってみたら?っていう感覚ですけどね。
失敗しても基本的にリスクは少ないし、ダメ元でやってみたらって今まで言っていましたが、ただ最近気持ちが変わってきています。
マイキ:
それはどういうことですか。
瀬口さん:
1人でやったら間違いなく失敗するから、最低でも3~5人でやって欲しいんですよ。
パトロン(支援者)がつかずに失敗するのはただのショックでしかない。
はじめてクラウドファンディングをやって支援が0で終わると、二度とやりたくない気持ちになります。
マイキ:
残るのはお金じゃなくてトラウマだけですよね。
瀬口さん:
だから以前の勧め方は間違っていたかもしれないと思いました。
リスクがないから、複数人でチームを組んでやって欲しいです。
支援額が目標に達さなくても、40~50%達成していたら、あと一歩だったとか、もうちょっと頑張ったらいけたとか、前向きになれます。
マイキ:
達成率が0%だったらクラウドファンディング使えねえよで終わるだけですもんね、それは非常にもったいないです。
瀬口さん:
クラウドファンディングやれだけじゃダメだった。
マイキ:
場合によっては無責任な言葉になっちゃうことはありますもんねー。
ページ作りとか、特典設計とか、プロモーションとかやらなきゃいけないことが盛りだくさん。
チームを作れとは本当にその通りだと思いました。
謎を解き明かす
「根回し」という言葉は、捉え方によってはネガティブな印象を持たれることがあるかもしれない。
しかし、クラウドファンディングは開始時のスタートダッシュが重要で、事前に声をかけて仲間やファンを作ることが大事なのである。
シビアだが、支援がほとんど集まっていないものは盛り上がっていない企画と思われてしまい、内容を読んでもらえることすらない。
だから、根回しという名の周到な事前準備こそがクラウドファンディングの成功には欠かせないのだろう。