こんにちは、きびだんご随一のキックスターター・ウオッチャー、まつざきです。
Kickstarter(キックスターター)といえば、みなさん良くご存知の米国最大のクラウドファンディングサイトですが、ここ数週間、キックスターターといえば皆が騒いでいたのは、面白いガジェットでも人気ゲームでもなく、「ポテトサラダ」でした。
「ポテトサラダを作ります。ただのポテトサラダ。どんな種類にするかはまだ決めてないけど。」
とだけ書いてあるプロジェクト。
残すところあと5日ですが、既に6,500人近い支援者から$50,000以上の資金を集めています。
ちなみに、支援して得られる特典はこんな感じ。↓(支援者数は7月28日現在)
資金が集まるのに併せて、次々と約束することを追加していきました。
「$35集まったら4倍の量を作るよ」→達成!
「$75集まったらピザパーティ開くよ」→達成
「$100:レシピを増やして二種類作るよ」
「$250:マヨネーズを自然志向のやつに変えるよ」
「$300:シェフを呼んで、ましなレシピにするよ」
「$350:もっとめちゃくちゃ大量のポテサラ作って、たぶん三種類目を作るかな」
「$1,000:ポテサラ作るのをストリーミングで流すよ」
「$1,200:誰かに頼んで、支援してくれたみんなにお礼のビデオを作るよ」
「$3,000:キッチンにみんな入り切らなくなるので、場所を借りてインターネットの住人のみんなを呼べるようにするよ!」
単なるお祭りネタ、と言ってしまえばその通りですが、これを開催したプロジェクトオーナーのオハイオでウェブ制作会社を営むザック・ブラウン氏。ネットを調べたら、面白いインタビュー記事が出てきたので、一部かいつまみながらご紹介します。何よりも興味深いのは、インタビューに答えたプロジェクトオーナーのコメントが、極めてクラウドファンディングの本質をついていて、的を得ているところ。
①プロジェクト開始のタイミングを考える
「ネット検索で『ポテトサラダ』が最も多く検索されるのが、米国最大の祝日といっても良い独立記念日の7月4日の前日であることを知り、プロジェクトの開始を7月3日に設定した。」
プロジェクトによっては、特定の季節にとても合っている商材やサービスであることもあります。Googleトレンドを使えば、どんなキーワードがいつ注目されるのかが良くわかりますね。
②目標を現実的に、特典を魅力的な価格で提供する
「芸人は先にチケットを売ってお金を先に集めるけど、今回自分のやったことは、先に面白いネタを提供して、『面白かったらお金を払ってね』という形で特典を提供したんだ」とのこと。
このプロジェクトの目標は何と$10。人々がこぞって支援している特典は$1(1,929人)、$2(1,148人)、$3(1,177人)など、「これくらいならおひねりとして払っても良いや」と思える金額です。
ばかばかしい中身のプロジェクトだけに、気軽に支援できる特典の価格設定が重要だったと言えます。
③友達を仲間として巻き込む
このプロジェクト自体は、いつもの友達との冗談話から生まれた」とのこと。「友達と一緒に楽しみたい」というのがお金でも名声でもなく彼が一番やりたかったこと、だそうです。それもあって、友達からの協力が沢山集まったとのこと。「プロジェクトやるんだったらビデオ作るよ」とビデオ制作会社を経営する友人、「僕はプロジェクトの骨子を書くよ」とクリエイターの友人。経理やオペレーションにも友達が協力してくれたとのこと。「1,000枚のTシャツを一人で送るなんて、絶対にできなかったと思うよ」とブラウン氏は語っています。
これは勝手な推測ですが、もし上で「限定4名」とある特典を彼の友達が支援していたとすれば、実際に6,400人がストリーミングで見守る中、「$60,000を集めたポテサラ」を作る場に立ち会えたらめちゃくちゃ面白いと思いませんか?
④支援者にきちんとした価値を提供する
「インターネットはATMじゃないんだ」とブラウン氏は言っています。「ただ『ネット上でお金が欲しい』なんて言っても誰も何も出さないよ。むしろ、まるでその逆で、どうやったら支援者に出来るだけ価値を感じてもらえるか?からスタートすべきだ」と。
これは我々きびだんごが基本としている「インターネットは自動販売機ではなく、ただプロジェクトを開催したら自動的に支援が集まるなんてことはありません」というポイントそのものです。
「クラウドファンディングと物乞いには大きな違いがあるんだ」とブラウン氏は続けます。
特典として、実際のポテトサラダの写真を送ったり、支援者のために場所を借りて、ストリーミング中継をしたり。そうした様々な特典に、支援者の人達は支払ったお金以上の価値を感じてもらえたのではないかと彼は考えます。
⑤ポイントを明確に
「自分のストーリーを出来るだけ完結に伝えられるかが勝負。自分の世界にいかに読み手を引きずり込むことができるかに成否が掛かっている」
面白いのは、ブラウン氏が「キックスターターはプロジェクトオーナーのやろうとしていることに社会的な意義があるかどうかや、プロダクトがどれだけ素晴らしいか」は正直、一番大事なことではない」と言い切っているところ。
むしろ大事なのはプロジェクト自体がどれだけ読み手に刺さり、魅力的に感じてもらえるかどうか。
本当にその通りだと思います。
⑥プロジェクトをやろうとしている自分を「ありのままに」きちんと表現する
「自分自身の姿をありのままに表現し、理解してもらうことがとても大切」とブラウン氏は説きます。ざっくばらんな書きぶりは、ブラウン氏のひとなつっこい性格がにじみ出ています。しゃべっているような書き方、支援に対する仰々しいまでの感謝の気持ちなど、彼の性格が支援者の人達に気に入られたのは間違いありません。
⑦「プロジェクトに参加している」意識を持ってもらえるようにする
「みんな、その場に直接いられなくても、何か面白いコトに一枚噛んでいたいのです」とブラウン氏。「一つのアイデアを取り囲むようにできるコミュニティを作ることが大事なんだと思います。あるプロジェクトが、みんなを一つにすることが出来るのであれば、それはみんなをワクワクさせることでしょう。」
なかなか誰もが簡単にできることではないかもしれませんが、我々もこの「みんなに参加してもらう」という感覚が非常に大切だと思っています。どうやったら独りよがりのプロジェクトではなく、みんなに参加してもらえるプロジェクトにできるか。
⑧差別化
これも非常に面白いのですが、このプロジェクトがメディアで取り上げられてから、数限りないプロジェクトが出てきました。
当たり前ですが、ほとんどうまく言っていません。二番煎じではダメなのです。
大事なのは、このプロジェクトの価値の大きな要素が、ポテトサラダを作ることではなく、まだ誰も見たことががない、初めてのものだったことです。
いかにそのプロジェクトが他と比べてユニークな、オリジナルなものにできるか。ポテトサラダ自体は誰にでも作れますが、このプロジェクトはブラウン氏でなければ作れなかったと言えます。
⑨ユーモアの要素
面白いネタには誰でも首を突っ込みたいもの。「みんな『ああ、あのポテサラプロジェクトね。僕も1ドル支援したんだよ』と言いたいんだよ」とブラウン氏は言います。
クラウドファンディングプロジェクト、というと何となくみんな「一生に一度しかできないような大事」と考えがちですが、実際にはきびだんごではプロジェクトオーナーの方々ひとりひとりに幾つものプロジェクトを開催してもらいたいと考えています。区切りのある一つ一つのプロジェクトを幾つも実現させることを通じて、そのひとが長い時間をかけて実現したいと考えている、より大きな目標に少しずつ近づいていけるのではないかと思うのです。
(参考:Business Insider)