関谷誠さん
テンナイン主宰
1977年生。宮城県出身。
俳優、演出家、シネマイミスト。二人芝居劇団sekiya makoto 2 man live主宰。
テンナインのシネマイムのほとんどを製作する。
お祝いにクラウドファンディング
関谷さん:
なんでそもそもテンナインにインタビューを?こっちが聞いちゃいますけど。
マイキ:
インタビューするなら、自分自身が支援した、思い入れのあるプロジェクトがいいなと。
関谷さん:
支援したんですね笑
マイキ:
他にはないですよね、映画をパントマイムで表現する「シネマイム」って。
映画を使っているから、世代や性別を超えてウケるっていうのは凄いと思いました。
関谷さん:
老若男女にウケるというのは目指したいところですよね。
マイキ:
映画ってコンテンツはいいですよね。ジブリだったら子供にウケるし、バック・トゥ・ザ・フューチャーだったら上の世代にウケる。
関谷さん:
そうですね、わかりやすくお客さんとの距離がすぐ縮まって、笑いやすい空気が生まれてやすいです。
マイキ:
活動をしていく中でクラウドファンディングやろうと思ったのは、テンナインの誕生日を祝うためでしたよね?
関谷さん:
1年に1回はテンナインで自主的なイベントをしたいと思っていました。
マイキ:
普段の結婚式や居酒屋での営業パフォーマンスではないものですね。
関谷さん:
どうせやるなら、ゴールに向かって行きつつ、その途中でも皆で楽しめることを色々やれたらなと。
「ライブハウスの公演が1ヶ月後にあります来てください」って言って、チケット売って、やって終わりはつまらない。
そこで思いついたのがNHKの『ドキュメント 72時間』という番組。
マイキ:
スカイツリーの前でとか、72時間同じ場所で過ごす人間の姿を観測するドキュメンタリーですね。
関谷さん:
そう、あれが好きで、72時間のイベントにしたら面白いんじゃないかなと思いました。あと、入場無料をやりたかったんです。
マイキ:
お金は投げ銭方式で集めて、入場料は取らないというこだわりがあったんですか。
関谷さん:
チケットを売るのは大道芸人的ではなく、演劇寄りなんですよね。もちろん投げ銭よりも、チケット売った方が採算は取れます。
だけど、観た人からその場で感じたものを投げ銭という形でいただけること、あと人間の葛藤を見れるのがいいんです。
ちょっと曲がっているかもしれませんが、通りすがりに観て楽しめちゃったけど、あまりお金がないという人たちが葛藤する様が見れるんですよ。
マイキ:
あっ、この人迷っているなってわかるんですね。
関谷さん:
ちょっと立ち去りたい、でも観ちゃったしな。そんな人がなけなしのお金をチャリンと入れていくのがいい。
お金を出す出させるの間に駆け引きがあって、それって面白い。
マイキ:
大道芸は、感謝や感動の度合いがお金になるだけじゃない。空間なのか雰囲気なのかムードなのか…
関谷さん:
そこにどれだけ飲まれるのか、あるいは飲まれまいとするのか。
人によっては1万円とかポンと投げることもあるから、それもなんか嬉しいですよ。
マイキ:
入場料3000円という価格設定にはない面白さですよね。
関谷さん:
そうですね。もちろん100円を入れる人もいるけど、そこは馬鹿なもんで、100円入れられたことは覚えてないんです。
1万円入れたことは記憶に残るので、いい思い出しかない笑
自分たちが頑張れんの?
マイキ:
クラウドファンディングは前からやりたかったと聞いていました。
関谷さん:
そうなんですよ、でも結局Kibidangoサイトで開催されているプロジェクトを見ても参考になるプロジェクトが見当たらなくて。
クラウドファンディングって特典(リワード)があって、作りたいものがあって、それを欲しいと思う人に応援してもらうじゃないですか。
テンナインは形にならないものだから、特典が決まらず1年以上プロジェクトを始めることができていませんでした。
マイキ:
無理にやろうと思えば入場料って形でできたと思いますが、コンセプトに合わないからやらなかったのは、テンナインらしい。
関谷さん:
チケット屋さんではないですからね。チケットを売ってクラウドファンディングやることに、楽しめるイメージがなかったんですよね。
どんな馬鹿なことでも、堅くるしいことでも自分たちがイメージできて、頑張れるって思えばGOサインは出ると思います。
「自分たちが頑張れんの?」という問いに対して、答えがずっと出ていませんでした。
マイキ:
72時間のイベントの中で最後の24時間が本演技で、それまでは準備時間。
イベント中に新しい作品を一つ作るという企画でしたが、結果どうだったんですか。
関谷さん:
普通は一つの作品を作るのに、10~30時間ほどの稽古をしており、その前には構想する時間も必要です。
72時間で作品を作って最後に上演、そしてその一連の流れをドキュメントにしようって考えたときに、作品の決め方をどうするかが重要でした。
こちらから作品案を提案したら、事前に準備できると疑われます。だから、プロジェクトの特典として作品を決めるための投票をギリギリまで受け付けたんです。
マイキ:
支援時に、TSUTAYAの人気映画100の中からやって欲しい作品についてコメントするというものでしたよね。
関谷さん:
はい、当日72時間の始まりの0時に発表、「この映画に決まりました!」って。でも誤算がその映画が3時間以上あったんですよ。
長いから観るのに時間がかかって、更にパフォーマンスするシーンを選ぶためにも繰り返し見なくちゃいけないから、早送りも駆使しました。
マイキ:
で、その作品が?
関谷さん:
『きっとうまくいく』
マイキ:
『きっとうまくいく』
関谷さん:
きっとうまくいったよ…きっとね笑
結果だけでなく過程も皆で楽しむ
マイキ:
ファンからは「シネマイムの作品がどう作られているか気になる」という声があがっていたということですが。
関谷さん:
そう、だから私がパソコンに向かってカチャカチャ作業しているところから、72時間ユーストリームで配信していました。
ユーストリームってコワいもので、視聴者数が出るんですよね。
マイキ:
見られていると緊張感ありそう。
関谷さん:
いや、72時間配信し続けると不思議と慣れてくるんですよ。
マイキ:
あぁ、それ刑務所の囚人と同じ心理じゃないですか。
関谷さん:
もう全然慣れて、鼻くそはほじらなかったから大丈夫だと思うんですが、あくびなんかは全然してた。
マイキ:
投票の特典とか、特典づくりって相当考えられたんじゃないですか。
関谷さん:
特典づくりは相当苦労しましたが、 投票は早めに思いつきました。
マイキ:
クラウドファンディングって支援者と一体になって、企画を成功させるのが醍醐味です。
投票って皆で決めて企画を作っていくからクラウドファンディングらしいし、いいなぁと思いました。
関谷さん:
やっぱ気になるじゃないですか、一ヶ月前に投票したとして、じゃあ今投票したものの順位がどうなっているかって。
マイキ:
過程もクラウドファンディングでは楽しむ。
関谷さん:
やっぱ支援者に活動を追ってもらわないといけないという気持ちがあって、活動報告も頑張っていました。
追って見続けてもらうにはネタが必要で、そのために投票はいいアイデアではありました。支援して、あとはもう興味がないってなるのは寂しい。
マイキ:
それだったら普通のショッピングとも変わらないですもんね。
どの特典がお客さんに好評だったとかありますかね、あっこれ人気ありそう。
関谷さん:
これはフェス中の72時間の映像をすべてディスクに入れてお届けする特典。これは1テラバイトあるから、かなり容量圧迫しますよ。
マイキ:
やばい。普通の映画1本2時間だとしたら、36本分ですか…
関谷さん:
そうダビングが大変でした。映像いらない人は消して、ハードディスクとして使えばいいと思います。
マイキ:
そういう使い方もできるのか。これ皆、全部見てるんですかね?
関谷さん:
いや、絶対見てないでしょ。だって、私が何時間もパソコン打っている姿って見ていて全く楽しくないでしょ。見てもフェスの上演している部分だけかと。
マイキ:
ドキュメンタリーって普通は魅力的なシーンだけをカットするのに、垂れ流しですか。
関谷さん:
完全ノーカットでお届けします。
マイキ:
これお客さんにカットしてもらいたいですよね。それで「自分は1時間でこう作りました」って競い合ってもらうのもクラウドファンディングの一つの企画とする。
関谷さん:
それがあったら、テンナイン側も楽だから使わせてもらいたい。
マイキ:
そういえばテンナインの目標って何でしたか?
関谷さん:
今は東京、神奈川、千葉とかをメインに活動しているので次は地方営業かな。最終的にはJapan Expoとエディンバラ国際フェスティバル、それが2大目標ですかね。
マイキ:
地方とか行くなら、それこそクラウドファンディング使って「地方に行かせてください!」って頼めばいいと思います。
関谷さん:
47個プロジェクト出せたらいいな。
マイキ:
1つのプロジェクトでも、集めたお金で購入したキャンピングカーを使って、47都道府県をツアーして回るミュージシャンもいましたし。
関谷さん:
それやりたいわ、来年とか地方に出るので。
熱量を維持し、最後まで走り抜くこと
マイキ:
今回プロジェクトをやってよかったことはありますか。
関谷さん:
自分たちの商品価値を見つめ直し、考える機会になったことです。
シネマイムは映像映えしないけど、どうやったら支援を集められるかって考えた時に、知恵を絞れば色々とアイデア出てきて実現できるとわかったのは大きかったです。
マイキ:
なるほどですね、その他にありますか。
関谷さん:
あと大きかったのは、資金調達前にフォロワーを集められる『種プロジェクト 』の時の活動なんですよね。
誰も何も知らない状態でプロジェクトをスタートしても、お金は集まりません。
なので、「来て。シネマイム。」という交通費と食費だけでパフォーマンスに伺うイベントを続け、活動報告も駆使して知り合りやファンを増やしていきました。
最終的には約80名の方から支援をいただきましたが、それも種プロジェクトの時の活動のおかげです。
『種プロジェクト』とは、クラウドファンディング開始前にティザーページとしてアイデアを公開できる機能です。
マイキ:
最後に、クラウドファンディングを考えている人に一言お願いできますか?
関谷さん:
非常に辛かったけど、やっぱり大事なのはコツコツやること。
熱量を維持し続けるっていうのは非常に大事で、最初は希望に満ちていると思うんですよ。
勢いでガンとプロジェクトが始まりますが、それ以降1ヶ月続けなきゃいけないじゃないですか。
コツコツ熱量持ってやる人もいるし、事前に1ヶ月の間に何やるか決めてからやる人もいる、とにかく継続するための努力と工夫が必要。
それをしっかり決めてからはじめることを強くオススメします。
謎を解き明かす
クラウドファンディングは、ページが完成して終わりじゃなくて、そこからが勝負。
彼らはページを作成してから、フォロワーや支援者への活動報告メールを58回、出張パフォーマンス『来て。シネマイム。』を10回ほど行い、地道にファンを増やしていった。
結果として、たとえ入場料が無料でも「お金」という形で応援したい!という人が現れたのだった。