配送のスピード化が目覚ましく進化していく流れのなか、「5年後に届くワイン」を売るというクラウドファンディングならではの事例をご紹介します。

新潟のワイナリー・フェルミエが新しく挑戦するピノ・ノワールのワイン造り

ワイナリー「フェルミエ」の新たな挑戦

新潟のワイナリーフェルミエ
新潟のワイナリー「フェルミエ」代表の本多孝さんは、38歳で銀行マンから脱サラし、家族で新潟へ移住。ぶどう栽培からワイン販売まで一気通貫で手がけるワイナリーを2006年から始めています。本多さんが満を持して掲げたのが、「ピノ・ノワール」への挑戦でした。

新潟のワイナリーフェルミエ

ピノ・ノワールは、ワインの王様「ロマネ・コンティ」の素材としてワインファンを魅了する品種ですが、気候や地質を選ぶ気難しいぶどうでもあります。そんな難しい品種に敢えて挑戦した本多さん。「『日本のピノ』と呼ばれるようなワインを造りたい」という夢を掲げてプロジェクトを企画しました。それは、ピノ・ノワールの苗を植えてぶどうを栽培し、数年後にそのぶどうからワインを作るという長期間に及ぶ壮大なプロジェクトです。

5年後に完成するワインを2万円で売ることができるか?

プロジェクトの内容は、ピノ・ノワールの苗木900本を買うのに必要な90万円を目標額に設定し、「ピノ・ノワール会員」になってくれる人を募るというものでした。

新潟のワイナリーフェルミエ

「ピノ・ノワール会員」の特典は、21,000円。この特典を選んで支援した人は、ピノ・ノワールの苗木のオーナーになり、5年経過後は毎年一本ずつ出来上がったワインが送られるという内容です。結果、「5年後に届くワインを21,000円で買う」というハードルの高さにも関わらず、支援募集開始から20日間という短期間で、100人以上のサポーターから、合計250万円を超える支援が集まりました。

新潟のワイナリーフェルミエ

ただワインを買うのではなく、ワインが届くのを待つ「楽しみ」も買う

単に店頭に並ぶワインを買うのではなく、苗木のオーナーになってフェルミエと共にプロジェクトに積極的に関わることにより、ぶどうへの思い入れが強くなり、できあがるワインを心待ちにし、より美味しく感じることができます。

新潟のワイナリーフェルミエ※画像:「苗植え体験」などツアーに参加できる特典も。参加者はより「自分の苗、自分の畑」として思い入れを強くする。

では、5年後のワインを待つ喜びとはどのようなものでしょうか?事実、ピノ・ノワールの苗木オーナーたちはまるで自分の畑や苗木のことを語るように、こんなコメントを残しています。

「今年子どもが生まれたので、5年後にワインが届いたときに、『これはあなたが生まれたときに植えられた苗が育ってできたワインなのよ』という会話ができるのかな、などとイメージを膨らませられるのが幸せ」

「ワインには詳しくないのですが、ぶどうの苗が育ってワインになるまでのプロセスを5年間見続けられることが面白いと思って」

これらの声をみると、「便利・安心」とは異なる「楽しさ」の価値とは何なのかがよくわかってきます。

「自分の友人知人」から全く知らない人達に拡散し支援が集まる

「プロジェクトが立ち上がった直後は、自分の周りでワイナリーを応援してくれている友人や知人、既存のお得意様などが新たな試みを応援してくれました。ただ、支援募集が始まってからしばらく経つと、SNSや口コミなどから次第に情報が広がっていきます。ある日、福岡のラジオでプロジェクトのことが取り上げられていたのに気づいた時は驚きました。」と本多さんは話す。こんな風に、元々何の接点もないはずの所に自分のストーリーが広がっているという体験は、クラウドファンディングならではといっても過言ではありません。


新潟のワイナリー・フェルミエが新しく挑戦するピノ・ノワールのワイン造り
目標金額:¥900,000達成金額:¥2,500,600サポーター人数:107人

新潟のワイナリーフェルミエ