Kibidango Circleをはじめます

こんにちは、きびだんごのまつざきです。

このたびKibidangoは、新しいサービス「Kibidango Circle」をはじめます。ひとことで言えば、「欲しい人が集まった分だけ、無理なくつくって届ける」ための仕組みです。

Kibidangoで長くクラウドファンディングに関わっていると、ときどき不思議に思うことがあります。

世の中には、まだ知られていない魅力的な商品がたくさんあります。
それを欲しいと思う人も、少なからず存在します。

ところが、その両者が出会っても、商品が実際に流通するとは限りません。

「日本で何個売れるかわからない」
「最初にまとまった数量を仕入れなければならない」
「在庫を抱えるリスクが大きい」
「一般販売するには市場が少しニッチすぎる」

そんな理由で、日本には入ってこない商品があります。

国内の商品でも同じです。

以前つくった商品をもう一度販売したい。けれど、通常販売のために在庫を積み増すほどの需要があるかはわからない。
面白いアイデアはある。けれど、何千個、何万個という規模で売れるものではない。
少数でも確実に欲しい人はいるのに、従来の流通の仕組みでは採算が合わない。

Kibidango Circleは、こうした商品と人をつなぐためにつくった、新しい「適量生産」の仕組みです。

ただし、この発想そのものは、決して新しいものではありません。

これまでにも世界中で、共同購入、予約販売、Made to Order、クラウドファンディング、コミュニティコマースなど、さまざまな名前のもとに、「需要を確認してからつくる」試みが行われてきました。

Kibidango Circleを考えるにあたり、あらためてそれらの歴史を振り返ってみたいと思います。

 

Massdropが見せた、ニッチな熱量の集め方

2012年に始まったMassdropは、のちにDropへと名称を変え、オーディオやメカニカルキーボードをはじめとする、熱量の高い趣味のコミュニティを中心に成長しました。

もともとのMassdropという名前が示す通り、基本にあったのは、同じ商品を欲しい人を集め、まとまった数量で購入するという発想です。

一人では実現しにくい価格や仕様でも、欲しい人が集まれば実現できる。

さらにDropは、単に既存商品を安く共同購入するだけではなく、コミュニティの意見をもとにメーカーと独自商品を開発する方向へと進んでいきました。特にオーディオ製品やキーボードの世界では、メーカー、専門家、愛好家が一緒になって、既存製品の仕様を磨き直したコラボレーション商品が数多く生まれました。

「大衆向けではないが、ある人たちにとっては強烈に欲しい」

そんな需要を可視化し、商品化へつなげたことが、Massdropの大きな功績だったと思います。

一方で、コミュニティコマースを持続的な事業として運営する難しさも浮き彫りになりました。Dropは2023年にCorsairによる資産取得が発表され、その後、独立したストアとしての運営を終えることになりました。

熱量の高いコミュニティを集めることと、事業として継続的に商品を開発し、販売し、サポートすることは、似ているようで別の問題です。

Dropは2023年にCorsair傘下に入り、2026年には独立したECストアではなく、Corsairグループのコラボレーション商品を紹介するハブへと役割を変えました。

これは、Massdropの考え方が間違っていたという話ではなく、むしろコミュニティの熱量を起点にした商いには大きな可能性がある一方、それを持続可能な仕組みにすることは簡単ではないということだと思います。

Quirkyが挑戦した「みんなで発明する会社」

2009年に米国で生まれたQuirkyは、さらに野心的でした。

ユーザーが商品アイデアを投稿し、コミュニティが評価や改善に参加する。選ばれたアイデアはQuirkyのチームが設計し、製造し、小売店で販売する。そして、アイデアを出した人や開発に貢献した人に収益を還元する。

つまり、発明から商品化までのプロセスそのものを、ひらこうとしたのです。

曲げられる電源タップ「Pivot Power」など、実際に大きなヒット商品も生まれました。Quirkyは製造、マーケティング、流通までを引き受け、個人のアイデアを商品として世に出すための巨大な装置になろうとしていました。

しかし、Quirkyは2015年に連邦破産法第11章の適用を申請します。

商品アイデアを集めることはできても、それらを一つひとつ設計し、安全性を確認し、製造し、在庫を持ち、小売店へ流通させるには、膨大な費用とオペレーションが必要です。

「みんなで選んだ商品だから売れる」とは限りません。

投票には参加するけれど、購入まではしない人もいます。
話題にはなるけれど、継続的には売れない商品もあります。
面白さと、事業としての採算性は、必ずしも一致しません。

Quirkyの挑戦は失敗だった、と一言で片づけることもできます。

しかし、アイデアを持つ人と、それを求める人と、商品化できる企業を結びつけようとした思想は、その後のクラウドファンディングやコミュニティ型の商品開発にもつながる重要な実験だったと思います。

LEGO CUUSOOが証明したファンの声の価値

日本から生まれた先駆的な取り組みとして、LEGO CUUSOOがあります。

ユーザーが「こんなLEGOセットが欲しい」と作品を提案し、一定数の支持を集めると、LEGOによる商品化審査の対象になる。採用されれば、正式なLEGO製品として販売されます。

2008年に始まったLEGO CUUSOOからは、「しんかい6500」や小惑星探査機「はやぶさ」など、日本発の製品が実際に誕生しました。その後、この仕組みはLEGO Ideasとして世界へ展開されています。

このモデルの興味深いところは、人気投票だけで商品化を決めていないことです。

ファンから一定の支持を集めることは、審査の入口にすぎません。

実際に商品として成立するか。
安全基準やブランドの方針に合っているか。
知的財産上の問題はないか。
世界中で販売できるか。

最終的には、LEGO自身が責任を持って判断します。

コミュニティの熱量と、メーカーの専門性。そのどちらか一方ではなく、両方を組み合わせている。

LEGO Ideasが長く続いている理由の一つは、そこにあるのではないかと思います。

Gustinが試した、売れてからつくる服

ファッションの世界でも、「つくってから売る」のではなく、「売れてからつくる」モデルが試されてきました。

代表的な例が、米国のデニムブランドGustinです。

Gustinでは、新しい生地やデザインの商品をキャンペーンとして掲載し、必要な注文数が集まったものだけを生産します。目標に達しなければ商品はつくられず、購入者にも課金されません。

目標に到達した商品についても、基本的には注文された数だけを生産するため、大量の在庫を抱える必要がありません。Gustin自身も、需要と供給を先に一致させることで、余剰在庫や無駄なマーケティングコストを減らせると説明しています。

従来のアパレル企業が、流行を予測し、大量に生産し、売れ残った商品を値引きして処分するのに対し、Gustinはその順番を逆にしました。

まず商品を提案し、本当に購入する人が一定数集まったことを確認してからつくる。

購入者は、すぐに届く便利さを一部手放す代わりに、通常なら商品化されにくい生地やデザインを手に入れられます。

メーカーは、先に需要を確認できて在庫リスクを減らせる代わりに、製品完成までの過程や納期について、購入者に丁寧に説明できます。

ここには、単なる売り手と買い手とは少し違う関係があります。

「いいね」と「買います」は違う

QuirkyやLEGO CUUSOOは、人々の声を商品開発へ取り入れました。

Massdropは、ニッチな趣味を持つ人たちの需要を束ねました。

Gustinは、実際の注文が集まってから生産する仕組みをつくりました。

それぞれのモデルは異なりますが、共通していることがあります。

それは、つくる前に、需要の存在を確かめようとしたことです。

ただし、「面白い」「欲しいかもしれない」という反応と、「この条件なら実際に買う」という意思表示は違います。

投票が一万件集まっても、一万個売れるとは限りません。

SNSで大きな反響があっても、価格や納期が示された途端に需要が消えることもあります。

商品をつくるうえで本当に必要なのは、関心の数だけではありません。

価格、仕様、納期を理解したうえで、購入を約束する人がどれだけいるか。

Circleでは、この「いいね」と「買います」の間にある距離を、できるだけ曖昧にしない仕組みにしたいと考えています。

クラウドファンディングだけでは拾いきれないもの

もちろん、クラウドファンディングも「欲しい人を先に集める」ための仕組みです。

Kibidangoも、まさにその可能性を信じてサービスを続けてきました。

まだ世の中に存在しない商品。
新しい技術を使った商品。
誰かの強い思いから始まった挑戦。

その背景や物語を伝え、共感する人から資金を集め、実現につなげる。クラウドファンディングは、ゼロから一を生み出すための、とても強力な仕組みです。

一方で、すべての商品が壮大な物語を必要としているわけではありません。

すでに海外で販売されているけれど、日本では流通していない商品。
以前クラウドファンディングで販売され、もう一度購入したい人がいる商品。
色や仕様を限定すれば、一定数だけ生産できる商品。
メーカーの最小発注数量さえ満たせれば、日本に輸入できる商品。

これらを世に出すために、毎回、大規模なクラウドファンディングのプロジェクトを立ち上げる必要があるのでしょうか。

詳細なページを制作し、動画を撮影し、広告を出し、大きな目標金額を掲げる。

それが必要な商品もあります。
しかし、それほど大がかりな打ち上げ花火を必要としない商品もあります。

Kibidango Circleは、クラウドファンディングでは少し重すぎ、通常販売では在庫リスクが大きすぎる、その中間にある商品を扱うための仕組みです。

共同購入ではなく、「適量生産」

Kibidango Circleのデモページ。

Kibidango Circleでは、商品ごとに成立に必要な数量を設定します。

その商品を欲しい人が集まり、設定した数量に達すれば、メーカーへの発注や生産を行います。数量に達しなければ、原則として注文は成立しません。

構造だけを見れば、昔からある共同購入に似ています。

ただ、私たちが目指したいのは、単に「人数を集めて安く買う」ことではありません。

Circleで実現したいのは、必要とされている量を見極め、その分だけつくり、届けることです。

大量に売れることを前提としない。
大量の在庫を持つことも前提としない。
値下げによって無理に売り切ることも前提としない。

10人しか欲しい人がいない商品でも、10人いれば成立する方法を考える。
100人いれば輸入できる商品なら、その100人を探す。
メーカーの生産ロットが500個なら、本当に500人の需要があるかを、つくる前に確認する。

もちろん、少量生産なら必ず環境に優しいとか、予約販売なら絶対に無駄がない、という単純な話ではありません。

少量生産では、一個あたりの製造費や輸送費が高くなることがあります。
納期が長くなることもあります。
予期しない製造上の問題が起こる可能性もあります。

それでも、需要を予測だけに頼らず、実際の注文によって確かめることには大きな意味があります。

Kibidango Circleでは、この考え方を「適量生産」と呼ぶことにしました。

Circleという名前に込めたもの

Circleは、誰か一人を中心とした円ではありません。

商品をつくる人。
その商品を日本へ届ける人。
商品について伝える人。
そして、その商品を本当に欲しいと思う人。

それぞれが輪の一部となり、必要な人数が集まったときに、商品が動き出します。

買う人は、単なる支援者ではありません。
かといって、完成品を棚から選ぶだけの消費者でもありません。

「私はこれが欲しい」という意思表示そのものが、生産や輸入を実現させる一票になります。

ただし、投票だけでは商品は生まれません。

「いいね」と「買います」は違う。
欲しいという声と、実際の需要も違う。

Circleでは、関心の数だけではなく、実際の注文数をもとに商品化を判断します。

同時に、数字だけですべてを決めるつもりもありません。

たとえ少人数であっても、強く必要としている人がいる。
ほかでは手に入らない。
つくり手にとっても、次の挑戦につながる。

そんな商品については、どうすれば成立させられるかを、つくり手や購入者と一緒に考えたいと思います。

大量生産と一点ものの間にある、広大な可能性

これまでの流通では、商品はしばしば二つに分けて考えられてきました。

大量生産して広く販売できる商品か。
個別に注文してつくる、高価な一点ものか。

しかし、その間には、もっと広い領域があります。

30人が欲しいもの。
100人が欲しいもの。
年に一度だけ、300個つくればよいもの。
海外にはあるけれど、日本ではまだ知られていないもの。
一度は生産を終えたけれど、もう一度だけ復活させたいもの。

インターネットによって、こうした小さな需要を見つけ、束ねることは以前よりはるかに容易になりました。

一方で、その需要を実際の製造、輸入、決済、配送、カスタマーサポートまでつなげるのは、今なお簡単ではありません。

Kibidangoは、クラウドファンディングを通じて、その難しさに長く向き合ってきました。

プロジェクトを紹介し、購入者を集めるだけではありません。

海外メーカーとの交渉。
日本向けの仕様確認。
認証や表示への対応。
輸入、物流、決済、問い合わせ対応。
そして、ときには予定通りにいかなかったときの調整。

Circleは、単に注文を集めるためのウェブサイトではなく、Kibidangoがこれまで培ってきた、商品を実際に届けるための経験を活用する場でもあります。

なぜ今、Kibidango Circleなのか

一般流通でもクラウドファンディングでも拾いきれない領域に対して、Circleは新しい選択肢をつくろうとしています。

大量につくり、大量に並べ、大量に広告し、余ったものを値下げして売る。

その仕組みによって、私たちは多くの商品を安く、すぐに手に入れられるようになりました。この便利さを否定するつもりはありません。

しかし、その仕組みだけでは世に出てこない商品があります。

市場が小さすぎる。
説明が必要すぎる。
売れる速度が遅すぎる。
けれど、誰かにとっては、とても価値がある。

これまでなら「採算が合わない」の一言で消えていた、そうした商品を扱える場所をつくりたい。

まだ名前のない小さな需要を見つけ、つくり手へ届けたい。

商品が人を集め、人が集まることで商品が生まれる。
その輪を、無理のない大きさで何度も回していきたい。

クラウドファンディングが「まだ存在しないものを生み出す場所」だとすれば、Kibidango Circleは、「すでに見えている小さな需要を、実際に届く商品へ変える場所」です。

大きな市場をつくることだけが、商品の成功ではありません。

必要としている人に、必要な数だけ、きちんと届く。

そんな商いが、もっと普通に成立してもよいのではないか。

Kibidango Circleは、そのための新しい実験です。

ぜひ、この輪に加わってください。