1月某日に開催された「よるだんご部」、今回話題を提供してくれたのは、Webメディア「オモコロ」「ジモコロ」の両編集長、株式会社バーグハンバーグバーグの徳谷柿次郎さんと原宿さん。

後半戦は、最近増えている「企業のオウンドメディア運営」が主なテーマに。参加者も交えてのディスカッションタイムとなりました。(文中敬称略)

>>前半ダイジェストはこちら

企業のオウンドメディア、メディアのプロはどう見てる?

柿次郎:
後半は、皆さんの方で僕達や参加者に質問したいことがあれば聞いていきたいと思います。

質問者A:
私は今、社内に編集体制が全く無い状態でオウンドメディアを立ち上げて、
メディアに関しては素人の社員が記事を書いたり編集しています。
オウンドメディアを確立している企業は、どんな体制で運営しているかを聞きたいです。

きびだんごスタッフ:
そもそも「編集長」ってどんな仕事をやってるんでしょうか?

柿次郎:
僕はもう、新幹線チケットの手配まで何でもやりますよ。
企画考えて、ライターを見つけて、アポを入れて、取材に同行して、僕が撮影して、
ライターからあがってきた記事を編集構成して、自分で写真も加工して・・・って。
全部自分でやるしかないんです。

原宿:
僕は、ライターからあがってきたものに「最高!」って言って、あとは飲みにいくっていう。

一同:

柿次郎:
オモコロは、7年ぐらい「編集しない編集部」だったんですよね。
ライターが書きたいものを書いて、あがってきたものをチェックして、月20本アップしてきた。
それをずっとやってきた歴史があるんです。

原宿:
そもそもオモコロには面白い人しかいないので、直す所がないですしね。

よるだんご部

きびだんごスタッフ:
紙媒体の編集長はどうですか?

参加者(紙媒体関係者):
編集長の主な仕事は「クオリティコントロール」でしょうか。
編集部員がアイデアを50個出したら、49個ぐらい削られて。それを5回ぐらい繰り返してー。

一同:
キッツ〜〜〜!

柿次郎:
オモコロは90個出したら、88個ぐらい通ります。

一同:

参加者(紙媒体関係者):
ブランドを作っていく「旗降り役」が編集長の役割なんだと思います。

柿次郎:
全然違いますよね、紙とWEBって。予算感も全然違う。
最近のWEBメディアは3〜4人でまわしていたりもしますし。

山口:
WEBの場合は調整しながら進めることもできますからね。
あと、紙に比べて記事を出す事にあまりお金がかからないんですよ。

参加者(ウェブメディア立ち上げ経験者):
あるウェブメディアの運営会社を立ち上げたことがあります。
既存雑誌のオンラインメディアという位置付けでしたが、人事交流はゼロ。
まさに社内にメディア経験者が一人もいない、
記事が書けるかやってみないと分からない状態からスタートして、
地道にやり続けました。3年ぐらい経って軌道に乗った頃、
やっとメディア経験者を採用できるようになって。

でも、記事を書くことより、ディレクション出来る人がいない方が困っていましたね。
そこはさすがに外部から一人採用しました。

柿次郎:
一人でも変わりましたか?

参加者(ウェブメディア立ち上げ経験者):
変わりました。でも、その人に絶対的権限を与えましたね。
社長も意見できないような。結果、それが編集長的な役割だったんだと思います。

柿次郎:
新しいウェブメディアは、大体経験のある編集長がいて、話題になる記事が出てきて、
そのメディアのブランドが作られていくという流れはありますよね。

原宿:
やりながら整えていくしかないっていうのはあると思います。

よるだんご部

記事の「クオリティの壁」はどう乗り越えていくべきか。

質問者A:
今は社員が記事を書いていますが、記事のクオリティがなかなかあがらないことも悩みです。

参加者(メディア運営):
私たちの場合、企画のアイデア出しは基本すべて外部に投げてますね。
「サラリーマンは面白く無い」と考えているので・・。

柿次郎:
ライターって忙しいんですよね。オモコロでも、ヨッピーさんのような人気のライターさんは仕事がパンパンなので、
アイデアだけでも出してもらう仕組みを作れたらいいですよね。

他でもオウンドメディアの相談を受けることはありますが、まず「予算」が無い。
会社の覚悟と比例した予算を用意しないと、人も採用できないし、
そもそもサラリーマンの給料の範囲内で最大価値を発揮するのは辛いんじゃないかなと思います。

参加者(ライター):
正直「クオリティの壁」は超えられないと思っていて。
どこまでいっても「素人が書いた文章を何とか構成して60点で出す」という流れになってしまう。
そうなると抜本的に変えるしかないんですけど、それにはプロの編集者が必要なんですよね。

柿次郎:
ローコストの記事を100本作るより、ライターさんに依頼した質の良い記事を10本に絞った方が、
世の中には伝わると思います。SEO的な視点から見ると考え方は違うかもしれないですが。

参加者(ライター):
(本数をあげるやり方は)やり続けられるのであれば、SEO的な価値はあると思います。
でもそれはブランディングでは無くなりますよね。

柿次郎:
企業の場合、まずは「ライターは専門性の高い職業」であることを、上司に理解してもらう必要はありますね。
SEOもすごく専門的なスキルが必要ですし、どちらを取るにしても、
ある程度予算がないと(オウンドメディアは)難しいとは思います。

質問者B:
ちなみに、皆さん記事を書くときはどれぐらい「SEO」に比重を置きますか?
キーワードで人を寄せるのか、ソーシャルでバズらせるのか─。

柿次郎:
SEOも考えてはいますが、コンテンツは今まで通り作りつつ、
SEOのテクニックをのせていくのが最強だと思っています。その逆はなかなか難しいのでは。

参加者(SEO担当者):
「このキーワードはこれぐらいの検索数があるから、このキーワードでページを作ろう」っていうのは、
どのキュレーションメディアでもやっている話だと思います。もちろんその中で勝つやり方もあるし、
でもそれだけだと疲弊してしまう。そして何よりみんな同じ事を考えている。
そうなると、「企画ありき」でとれるキーワードをとることが必要なんじゃないかなと。

「ライターはオタクを雇え」という話があります。
ある分野に特化できる人は語彙もあるので、企画ありきでキーワードを拾える。

社員が記事を書いてる場合、外部に意外に知られていない情報はたくさんあります。
でも、社内で編集しているとそのことに気づけない。だから、一人でもフラットな視点で見れる人がいれば、
「それ全然知らないけど、おもしろいよ!」って発見してもらえるんですよね。
なので、外部の目は必要だとは思いますけど、社員のリソースを使って各分野の記事を書くのは、
「オタクを雇え」という話からすると、ひとつのメリットでもあるんじゃないでしょうか。

質問者A:
めちゃくちゃ勉強になりました!

よるだんご部

柿次郎:
では、他の質問にいきましょうか。

質問者C:
編集者のキャリアってどうしていけばいいのかなっていう。
長期的に自分のキャリアを見たときに、いつまでやっていくのかなと思うことがあります。

柿次郎:
僕は「仕事を作れる編集者」でいたい。
集める情報の質を上げてお金を作れないと、ライターが幸せにならないと思っているので。
40歳くらいまでは今の感じでやっていって、今後は仕事を作る側に回っていきたいなと思っています。
編集者の中でも、ウェブに特化して、企画、広告、営業、SEOを総合力で語れる編集者の方が需要があるんじゃないかなと思っています。

その後、原宿さんの「一生編集長宣言」で盛り上がり、第1回「よるだんご部」は中締めとなりました。ご参加いただいた皆さん、ありがとうございました。次回「よるだんご部」もお楽しみに!

>>「ウェブメディアってなんだ?」おもしろかった所まとめ(前半)