クラウドファンディングサイト「kibidango」が主催する夜の部活動「よるだんご部」は、クラウドファンディングという括りから脱して、「会いたい人達と、話したいテーマをとことん語り尽くそう」をコンセプトに始まったイベント。

第2回目となる今回は「はたらき方共有会」と題し、「フィールドを制限しない働き方」を実現されている5名のゲストにお越しいただきました!

このレポートでは、その5名の皆さんにお話頂いた「はたらき方」を、ダイジェストでお送りいたします。

よるだんご

「合理的低コストで実現する豊かな暮らし」
檜原村ゲストハウス「へんぼり堂」代表 鈴木健太郎さん

鈴木さん:
へんぼり堂は、東京本土唯一の村「檜原村」にあります。村の人たちを『師匠』と見立てて習い事をする「寺子宿」というコンセプトで、村の暮らし体験ツアーを提供しています。例えば、村のおばあちゃんに習うそば打ちや、お寺で座禅体験など、年間40~50イベントぐらいを開催しています。

へんぼり堂

観光資源の無い土地にある「へんぼり堂」は、WEBプロモーションやイベントの内容で集客に成功したことで、新しい地方創生の形として取り上げてもらえるようになりました。へんぼり堂をきっかけに「田舎の何も無いところでゲストハウスを立ち上げる」という流れができてきた気がします。

きびだんご青井:
鈴木さんは新卒でチームラボに入社されて、6年ご活躍されています。気になるのは、「なぜ勢いある会社を辞めて今の働き方を選んだのか?」というところなんですが。

鈴木さん:
チームラボでは、色んな事業の立ち上げをやらせてもらいました。でも29歳のときに、次の「30歳~35歳」の間で何をしようかなと考えて、自分はアートディレクターになりたいわけでもない、それよりも自分で自分の看板でご飯を食べる能力を身につけたいと思って退職を決意しました。とか偉そうな事言ってますが、心が折れたのが最初の理由です(笑)

雇用にも資本にも左右されない仕組みを作りたかった。

鈴木さん:
もう今は、昔のように「日本の未来を自分たちの手で作るんだ!」と頑張って日本経済を発展させていっても、雇用が増えるわけでもないので、全員がハッピーになるのって難しいと思うんです。そこで、今の日本の資本主義社会において、雇用されなくても、資本に関係なくても生きられる仕組みがあればいいなと。もっと具体的に言うと、合理的に低コストで、お金がちゃんと入って来て、人との繋がりがあって、豊かな暮らしができる。そんなライフスタイルが実現できればいいなと考えた。その一つの答えが「へんぼり堂」だったんです。

へんぼり堂

都市部より大幅に低い稼働率で、「いかに働かないか」を実践。

鈴木さん:
実際、「へんぼり堂」は初期投資も運営費もありえないぐらい低コストです。車を買うよりも安いんじゃないかというぐらい。都市部のゲストハウスは、稼働率が6~7割超えないと黒字化しないと言われています。さらに7~8割を超えると、24時間365日ほぼ休み無しの状態。へんぼり堂は、低コストでの運営を実現しているので、かなり低い稼働率でもやっていけます。週休5日みたいな生活で、立ち上げ当時は「いかに働かないか」を実践してましたね。1日中YouTube観たり(笑)

へんぼり堂
古民家を述べ300人のボランティアとセルフリノベーションし、初期投資を抑えた。

当初は、20〜30店舗の直営を作ろうと思っていました。でも、1軒作るのは楽しいけど、2軒目以降は大変さが倍になって、楽しさは半分になる。それならやっても仕方がないんじゃないかと。そこで、今は自分のノウハウを色んな人に伝える活動をしています。

しへえどん鈴木さんは、去年1年間で8カ所のゲストハウスをサポート。今回参加していた藤田晋二さんが運営するゲストハウス「しへえどん」(千葉県金谷)もその一つ。

「元手少なく、自分の理想を追求するはたらき方」
ナリワイ代表 伊藤洋志さん

ナリワイ

きびだんご青井:
色んな「ナリワイ(※)」をされている伊藤さんですが、具体的なワークスタイルをお伺いしたいです。普段どんな風に過ごしていらっしゃるんでしょうか?

※ナリワイとは:
伊藤さんはナリワイを「個人で元手が少なく多少の訓練ではじめられて、やればやるほど健康になり技が身につき、仲間が増える仕事。」と定義づけ、さまざまな事業を展開している。

伊藤さん:
僕には「本体の仕事」というのはありません。基本はライターと編集業をやっているんですが、あらゆる業種において、自分の編集能力を生かして事業を作り出すというのが仕事です。

基本的に、全体で仕事を5つ以上、1つにつき最低年間30万円以上の規模でやっていこうと考えています。年間30万円ぐらいの規模であれば、自分の理想を追求しても何とかやっていけます。

きびだんご青井:
伊藤さんには、ナリワイのひとつである「野良着ブランド」の立ち上げで、kibidangoを利用して頂きました。

野良着プロジェクト

伊藤さん:
野良着は岡山県でデザインと生産を行い、農家の方向けに販売しています。アパレルは、最初にある程度の「ロット」の確保が必要ですが、kibidangoさんのようなクラウドファンディングを活用して、リスクなくスタートすることができました。

野良着のメンバーは3人。みんな本業があるので、そこまで儲ける必要もない。そこでまず、小売店に卸すのはやめようと。そうすれば、縫製工場が暇なときに、比較的少ないロットで発注できます。そして、行商イベントで販売する。このやり方であれば、個人でもメーカーになれるんですよね。

野良着

ちなみに、自分の仕事を通年で説明すると、6月は梅の収穫と販売、7月と9月はモンゴルのツアー、10月はみかんの販売。あとは、パン屋になるための講座もやって・・・。

へんぼり堂・鈴木さん:
もうそろそろ皆訳わかんなくなってると思う(笑)

ナリワイパン屋で開催するので、専門の教員も事務局も場所代もいらない。
実際、このワークショップでパン屋を開業した人もいるとか。
今後は職業系のツアーをもっとやっていきたいという伊藤さん。

とにかく「つまらないもの」「無駄なコスト」を減らしたい。

伊藤さん:
例えば、就職活動で旅行好きの学生が旅行会社を受けるとします。すると会社説明会で、「(旅行が)好きだからって出来ると思うな」といきなり夢を壊されていく。僕からしたら、そんなつまらない仕事をつくっている方が悪いだろうと。学生の素朴な願望を叶えられるぐらいの理想を追求した仕事を作りたいと。そうすると年間30万円ぐらいの規模が限界になり、それをいくつも並行してやるという形ができたわけです。

参加者:
それぞれのナリワイのアイデアは、どこから生まれてくるんですか?

伊藤さん:
農学部出身なので農業に関する事業が多いですが、あまり自分の「好き」は重視していません。それよりも「つまらないものを減らしたい」っていう欲求の方が強いかもしれません。あとは、自分が興味ある分野に近づいていくと、周りも「あの人やってくれそう」と認識してくれて、アイデアの元となる話が聞こえてくるようになるんですよ。

★他3名の「はたらき方」は後編にて!記事はこちらから。


ゲストプロフィール

鈴木健太郎

1982年神奈川県茅ヶ崎市出身。
北里大学大学院基礎生命科学研究科(化学)中退後、2007年にウルトラテクノロジスト集団「チームラボ」に2007年に新卒1期として入社。WEBサービス、自社ASPサービス、teamLab ball、teamLab hangerなどの新規プロダクト事業、ファッションブランドの立ちあげ、プロモーションなどジャンル・業界を超えて様々な事業を手がける。
2013年、築120年の古民家を述べ300人以上の参加者とともにセルフリノベーションし、都市と集落の交流と経済の拠点となる「東京ひのはら村ゲストハウス へんぼり堂」をオープン。その開業手法やライフスタイルが注目され様々なメディアに取り上げられる。へんぼり堂にて寺子宿というコンセプトのもと村都心問わず数多くの人を巻き込み数多くのイベントを開催しコミュニティづくりを行っている。

伊藤洋志

京都大学大学院農学研究科森林科学専攻修士課程修了。2007年より生活の中から生み出す頭と体が鍛えられる仕事をテーマに現代の複業的な生業モデルの研究開発と実践を開始。ギャラリースペース・シェアハウス・オフィスの運営や、企画業、収穫・販売だけを担当する農家業から農作業着メーカーなど生活拡張型の事業や「全国床張り協会」といったギルド的団体運営等の活動も行う。著書に「ナリワイをつくる」(東京書籍)など。