クラウドファンディングサイト「kibidango」が主催する夜の部活動「よるだんご部」は、クラウドファンディングという括りから脱して、「会いたい人達と、話したいテーマをとことん語り尽くそう」をコンセプトに始まったイベントです。

今回話題を提供してくれたのは、Webメディア「オモコロ」「ジモコロ」の両編集長、株式会社バーグハンバーグバーグの徳谷柿次郎さんと原宿さん。唯一無二のジャンルを確立してきたバーグハンバーグバーグ社を代表するお2人が、「ウェブメディアってなんだ?」をテーマに参加者と語り合いました。(文中敬称略)

9つのお題で語る「ウェブメディアってなんだ?」

柿次郎さん
今日はざっくり9個のお題を用意してきました。参加者はメディアの方が多いので、「どうっすか?」と問いかけていければと。

9つの話題

原宿さん
ちょっと会場がおしゃれすぎて緊張しています。

柿次郎:
僕は「ジモコロ」というローカル系のメディアの編集長をしていて、全国をまわっています。立ち上げ8ヶ月ぐらいの新米メディアですが、地方創生の流れにのっかって盛り上がりつつあるので、その辺りもお話できれば。

原宿:
「オモコロ」は10年やっているので、ブランドとしては大きくなってきています。

2月3日から「大ベンチャー展」やります!(ちょっと告知)

柿次郎:
まずは、2月3日から開催する「大ベンチャー展」の話題から。

クリエイティブ事業部部長 山口むつお:
賃貸事務所の仲介を行っている「三幸エステート」さんと一緒にイベントを開催することになりました。家入さんのミイラとか、堀江さんの恐竜とかを実際に作ってます。(未公開の写真をちょい見せ)

大ベンチャー展

柿次郎:
このイベントのセミナーに僕も登壇するんですが、そのテーマが「WEBメディア論&WEBコンテンツ論に終止符を打てたらいいな会議2016」ということで、なかなかディープな話になると思います。でも、メディアの話って、メディアによって主語が違うじゃないですか。なので、より多くのメディアの方の話を知っておきたい。そういう意味でも、今日はみなさんの意見を聞かせてもらいたいなと。

みんなの「好きなWebメディア」って何なの?

柿次郎:
実は、事前に一部の参加者の方に「好きなWebメディア」って何ですか?と聞いてみました。そこで挙がったのは、オモコロ、ジモコロ・・・・

原宿:
みんな媚びてますね〜(笑)

柿次郎:
他には、カラパイアナショナルジオグラフィックTOCANAクックパッドまぐまぐニュースSAKETIMESCAREER HACK灯台もと暮らしLIGデイリーポータルZなどなど。

他に好きなメディアってあります?

原宿:
デイリーポータルは、日常的にチェックしてます。まずは「はてなブックマーク」から読みますね。

柿次郎:
バーグハンバーグバーグは、はてなブックマークを1日に30回ぐらい読んでます。作業の隙間隙間に読んでるぐらい、はてなブックマークが好きな企業ですよね。あそこ見ていたら、ネットで何がウケるかがまとまってるという。

原宿:
そして、それで1日が終わるという。

柿次郎:
他にないですか?注目しているメディア。

原宿:
最近「kakeru」は面白いなあと思って見てます。編集長が変わられるってことで今後どうなるかはわかりませんが、僕らの知らない若い人達のLINEの使い方とかを教えてくれるので、すごく興味深いなと。

柿次郎:
若者のネット文化を記事にするのはあちこちで増えて来たなあという印象があります。

原宿:
ぜんぜん違いますもんね、若者のネットの使い方は。

柿次郎:
インターネットは「闇に潜る性質」があるじゃないですか。それを掘り起こすのがメディアの役割でもあるなと。

あと、僕は「HRナビ」の話題になっている記事はよく見ています。深さがあってすごいいいなって。沼田先生の記事なんかは8万いいね!ぐらいいってる。(現在は9.5万いいね)その記事がでた数日後に、フォロワーが3万まで増えたという噂も聞きました。

よるだんご

「note」登場で、メディアはいらなくなるんじゃないか問題

原宿:
続いて「note問題」。いや、別に問題にはなってないんですけど。
どういうことかと言うと、「note」は今、イケダハヤトさんや梅木雄平さんが話題になってますけど、個人で記事を「note」に出しちゃえば、売れるわけです。なんのメディアも通さずに。個人から個人に記事が売れるんです。梅木さんはそれで180万円、イケダさんは100万円を稼いでいると言われてます。
そうなると、メディアとか出版社って意味ないじゃんっていう。個人で出した記事が一番原稿料が高いとなれば、オモコロに出さずに自分で売ったほうがいいじゃんってなっちゃう。今後そういう流れがきたら、どうしようって話しです。

柿次郎:
無料の記事と有料の記事の使い分けもどうしていくか。今はまだ、みんなおもしろがって買ってる段階じゃないでしょうか。このムーブメントって、メディア関係者が買わないと乗り遅れる感ないですかね。

原宿:
スマホゲームで試しに課金してみようっていうのと一緒で、とりあえず買ってみて楽しんでみるみたいなね。
例えば、今自分のう●こを写真で撮って1000円で出したら、誰か買うだろうなとすら思う。5人ぐらいは買うんじゃないかって。(買った人が)「買ってみました。本当にう●こでした。」っていう。

一同:
爆笑

原宿:
今、う●こから金が生まれる時代に差し掛かっている!それがまさに「note問題」です。でも、先行者利益的なものなので、う●こで食えるのは最初の1人だけ。そのための競争がもう始まっている。今、この瞬間から!

よるだんご

柿次郎:
ちなみに、noteを有料で買ったことあるって人は?

(ひとり挙手)

参加者:
イケダハヤトさんの記事です。「使った方がいいブログの会社」っていう。

柿次郎:
ありましたね〜。情報の価値はあったと思いますか?

参加者:
まあまあ満足感はありました。記事は300円でした。

山口:
月額でもおかしくない金額ですね。

柿次郎:
オープンして1年半ぐらい経った今、盛り上がって来てますよね。積み上げてきたものなんでしょうかね。

山口:
僕は、「note」の今後の売り方って、何かの「裏話」がメインになるんじゃないかと思っていて。元いた会社の裏話とか。そういう悪口を売る文化にはなってほしくないな〜と思いますね。

原宿:
でも、お金出す人がいたら成立しちゃうからね。

柿次郎:
それで、社内にメールで共有しちゃうっていう。

原宿:
そう、その共有するのが楽って問題もありますよね。文章だからコピペできちゃうので。メルマガも同じだけど。その問題もあるのかなと。

柿次郎:
いまんとこ、noteで買った人ってそれはやってないんじゃないですか?いずれ「noteの有料スレ」みたいなまとめが出たりはあるかもしれないけど。

PV問題のむずかしさ。

柿次郎:
じゃあ、次は「PV問題」にいきましょうか。PV問題って皆さんご存知ですか?今、「PVを追っかけるのはもう古い!」という風潮があって。色んな記事とかでも「PVは死んだ」と言われていて。実際、そんなことない気がするんですけど。

原宿:
やっぱり「PVをいくらでも水増しできる問題」もあるじゃないですか。ページ分けたら増えるっていう。いくらでも増えますから。オモコロも8ページに分けたら、8倍になりますからね(笑)やったことはないですけど。

柿次郎:
あと、メディアのPVって基本的には「Yahoo!ニュース」のトップに載るかどうかが大きい世界ですからね。影響力は大きいんだろうとは思いますけど、ジモコロはもう無人島みたいな、自力でソーシャルでやるしかない世界なので親指くわえてるだけですね。

原宿:
オモコロもそうですけど、記事が配信されるわけじゃないですからね。むしろ、twitterが終わったら同時に終わるという。twitter依存がすごいメディアです。

柿次郎:
Yahoo!ニュースに載るためには、画像の枚数とか、フォーマットが決まっていて。「オモコロ」は画像もめちゃくちゃあって、記事も長いっていう。転載に全然向いてない状態から始まってるので、歩み寄ろうにもどうしようもないっていうね。でも、その「自分たちで何とかするしかないな」っていうのが、今のバーグの文化に繋がってるんじゃないかな。

原宿:
まあ、50万人フォロワーがいる剛くん(※)が四コマ書くのが一番流入があるっていう状態ですね。

※「オモコロ」でも活躍中、猫漫画で人気のWEB漫画家・鴻池剛さん。2/1時点でフォロワーは58万を超えている。https://twitter.com/tsuyoshiwood

柿次郎:
みなさんはどうですか?PV問題。

参加編集者:
最近、「新規UUの増加率」でメディアの成長率をみればいいんじゃないかって話があって。それは面白いなと。本当かどうかは、どうでしょう?(笑)

柿次郎:
確かに本当にそうかは分からないんですよね。
PV以外の次の指標が生まれてないのに、そういう(PVは死んだという)記事が増えているのは何なのかな?と。でも実際、PV増えるとテンションあがるじゃないですか。

参加編集者:
(メディアが)下火になってきたタイミングで、「脱PV!」って言い出すのは、なんだかな〜とは確かに思います。

山口:
悪く利用するから言われるんですよね。ページを分割したり。PV自体は悪く無いんですよ。

柿次郎:
そう!「PVは良い奴」なんですよ!

一同:

原宿:
「読了率」ってのも最近出てきてるみたいですね。「どれだけの人が最後まで読んだか」という指標も出始めているっていう。

山口:
それを計測するツールってまだ無料では使えないんですよね?

柿次郎:
有料ですけど、「AD EBiS(アドエビス)」が良いって聞きますよね。ネイティブアドの読者が、3ヶ月後もその記事を覚えていて購入に至るかもしれないというのを、マーキングしてずっと追えるサービス。あんまり無いらしいです。

「読了率」については、Googleがクロールしたときに、コンテンツがどれぐらい最後まで読まれているかどうかを見るとか、今後そういう風になっていくだろうっていう話しもありますしね。ちゃんと良いコンテンツを作っていれば大丈夫だと思うので、そんなに我々は危惧してないんですけど。

じゃあ、参加者が関わってるメディアはどうなの?

原宿:
他の指標としては、SEO的な視点もありますよね。

参加SEO担当者:
とあるイベントで聞いたんですけど、はてなブックマークとtwitterを連携しているユーザーの平均フォロワー数は「700人」を超えているらしいんです。そういう指標って、確かにメディアの価値として伝わりやすいなと。自社媒体のユーザーもこうやって分析ができれば、クライアントにとってもメディアの判断材料になるだろうなと思います。

原宿:
例えば、「オモコロ」についてツイートしてくれたユーザーを分析してとか、そういうことですよね。

柿次郎:
確かに、Yahoo!にぶら下がれないとなると、いかに気づいてもらうかっていうことに関しては、そういうやり方はありますね。

よるだんご

(ここで某オウンドメディアの担当者に話しを振る)

柿次郎:
御社での指標は、PVを大事にしてますか?ソーシャルの影響力とかはどう見てます?

オウンドメディア担当者:
その点で言うと、「切り分け」かなと思っていて。PVはもちろん見てますけど、どういう役割かと言われると、上司やクライアントに報告するためのものっていう。

柿次郎:
なるほど。

オウンドメディア担当者:
自分たちのモチベーションにとってどうかという視点では、twitterのコメントなどをすごく見るようにしています。それぞれの企画には狙いがあるので、その狙い通りの反応があるかどうかというのを見ていますね。それがセルフマネジメントにもなっています。なので、「PVが一番(重要)」ということは無いですね。

柿次郎:
良いコンテンツを作って、それがより多くの方に届いて、ソーシャルでもコメントが増えれば、自分たちが見えていなかったことも見えてくる。

オウンドメディア担当者:
「コメントをもらう」って、けっこう大きなパワーがいると思うんです。そこを動かせたっていうのは、そのコメントがプラスの内容でもマイナスでも価値があると思ってやっています。

(その後話題は、広告代理店参加者から見た「クライアント視点」でのPVに)

柿次郎:
企業のオウンドメディアって、「ジモコロ」もそうですけど、継続させるのが難しいじゃないですか。ジモコロに関しては、最初からアイデムさんに「PVの話しはやめましょう」と言っています。もちろん、一応PVの目標は立ててやっていますけど、それ以上に、クライアントの中の人をどう巻き込むかを考えて運営した方が、感情に刺さるなと思っています。

例えば、僕が京都でイベントに出たとして。そこに、クライアントの担当者を呼びました。そうすると、普段接点のない読者層の声に触れられるんですよね。そうやって、周りの声を社内に溜めていくオウンドメディアの在り方もあるんじゃないかなと。もちろん、そのためにはコンセプトもしっかり固めて、いいコンテンツを作っていかないといけないですけど。

山口:
そもそも、そういう関係者や周りの人の目にも触れさせないといけないですしね。

柿次郎:
あとは、ソーシャル上の「良かったコメント」のキャプチャをとって報告しています。弊社ではよくやっているんです。

「この記事ってジモコロだからできるよね」とか、「こういう企画だったら『広告』っていうPRタグついてても読んじゃうよね」とか、「こういう情報ってWEBにアーカイブしていくべきだよね」とか、そういう会社の文化に貢献してるぞっていうことを積み上げていくと、クライアントもオウンドメディアを継続しようと思ってくれるんじゃないかなと思います。

「オモコロ」はどうですか?

原宿:
ん〜どうですかね、ただただ続けてますけど・・・

一同:

原宿:
「ただ飽きずに続ける」ってことしか考えてないですけどね僕は。オモコロは「その日暮らし」のメディアだと思うんで。オモコロには「スラムダンク」を描けるやつはいない。でも、その日その日を暮らしていくことはできる。それぐらいの気持ちでやっているんですよね。

柿次郎:
バーグは文化的に「無職」が一番大事という風潮がある。一番才能があるのは「無職」だっていう。時間が無制限にあって、どんだけフットワークが軽いかっていうところで勝負してますからね。

原宿:
日々、面白いことをただただ出していく。それが10年続いた今、よくやってるじゃんっていう。ちょっと褒めてもらえてるっていう感じですかね。

柿次郎:
20年続いたらすごいですよね。

原宿:
まあ、それをやっていくには参加してくれるライターの数が必要だなっていう。そこの課題にも繋がっていくんですけどね。

─ここで前半が終了。後半戦のダイジェストはこちら