目標大幅超えも、後悔は多し!
チームで闘ったクラウドファンディングの裏側。

「完全栄養飲料COMP(コンプ)」は、たった1杯飲むだけで1食分の栄養の全て(※)を摂取できる次世代食品。この夢の飲み物を日本人の食生活に合わせて開発したのが、株式会社コンプの鈴木優太さん。(※厚労省「日本人の食事摂取基準(2015)」準拠)

この「COMP」の量産を目指したクラウドファンディングは、目標金額200万円に対し380万円を超える支援、250人を超えるサポーターが集まりました。(プロジェクトは1月31日に終了)大成功に思えるこのプロジェクトですが、高みを目指すあまり、後悔されていることも多々あるそうで─。

今回は、代表の鈴木さんと、同社マーケティング担当・相原さんにお話を伺いました。

comp

「食事の時間すら惜しい!」自身の経験から誕生した「COMP」

COMPは自由時間を提供してくれる
何かに熱中する時間が多すぎて、食事の時間が疎かになり、体調も崩しがちだったという鈴木さん。そんな鈴木さんが出会ったのが、アメリカで発売された「Soylent(ソイレント)」(※)。しかし、Soylentは日本での発売予定がなく、さらに、日本人の栄養基準にも少し合わないものでした。鈴木さん自身が化学と薬学(栄養学の基盤分野)の専門家ということもあり、日本人向けに開発を行うことを決意。そして完成したのが「COMP」です。

※「Soylent」とは
2013年にアメリカで開発された栄養機能食品。生存に必要な栄養素がすべて含まれ、従来の食事が不要になるというもの。米国クラウドファンディング「Kickstarter」で製品化された。日本での発売を熱望する人達も多い。

クラウドファンディング活用のメリットは大きく2つ

鈴木さん:「COMP」を発表する前、その前身となる「XiNADA(クシナダ)」という商品をテスト販売していました。その頃からクラウドファンディングの活用は検討していましたが、クラウドファンディングでは「生産の目処がついているか」について各社審査があり、当時はまだその壁を超えられていなかった。昨年10月頃にやっと生産の目処がつき、挑戦するに至りました。

ただ、当時と今では、「クラウドファンディング」の捉え方が全く違っています。当時は、純粋に『支援をしてもらって、目的を実現するもの』という認識でいました。つまり『支援の上に成り立つもの』がクラウドファンディングであると。ただ、いざクラウドファンディングに挑戦するにあたって、改めてその効果は大きく2つあると考えるようになりました。

1つ目は、自社サイトだけではできない「お祭り感」を演出できること。周りを巻き込み、PRの効果を期待できると感じました。支援者を集められたのはもちろん、kibidangoの問い合せフォーム経由で、「AERA」からの取材オファーもありました。

ascii記事プロジェクト開始当日には、プレスリリースも配信。多数のWEBメディアにも掲載された。※画像は「ASCII.jp」の記事

2つ目は、資金調達というよりは「予約購入システム」として活用できること。お客様に事前にお金を支払ってもらうシステムを、わざわざ自分たちで作るのは難しい。でも、クラウドファンディングならお客様を集めつつ、通常業務では生産体制の構築を進められる。これは、クラウドファンディング活用の一番の動機でした。

初日で先着分が完売!それでも思うのは「もっとやれたのに」

鈴木さん:「XiNADA」に興味を持ってくださっていた方には、量産の目処がたった時の連絡用に、メールアドレスを頂いていました。その方達にクラウドファンディング開始をアナウンスした所、早々に反響をいただき、初動はそこで作ることができました。この初動については、大体想定通りのものでした。

開始翌日には既にこんな喜びのツイートをしていた!

相原さん:ただ、プロジェクトのPRに関しては後悔していることが多々あります。10個ほど検討していた施策の内、正直2個ぐらいしかできませんでした。具体的にどういう所で後悔があるかと言うと─

スピード重視で「分析」の準備が整っていなかった。

実は、今でもなぜこんなに支援者の人が集まったのか、どこからどんな人が買ってくれたのか、詳細には分析ができていません。kibidangoさんには、どの媒体で効果が出ているかの情報は頂いていますが、それでもまだ全ての流入元を網羅できていない状況です。

例えば、数日支援が止まっていたにも関わらず、突然ある日の夜に支援が立て続けに入ったりすることがあります。きっと誰かがSNSやブログで発信してくれたり、何か要因があるはずなのですが、そういった所までは完全に分析ができませんでした。そこがもう少し完璧に分かれば、もっと効率良いPRの施策を打てたのではと思います。

また、kibidangoさんとの打ち合わせから、わずか1週間程でプロジェクトをスタートさせました。スピード感をもってスタートできたのは良かったのですが、その分、お客様をプロジェクト開始までに育てておくということが手薄になっていたとも思います。

ほとんどアップできなかった「活動報告」

kibidangoさんからは、「活動報告」をこまめにアップするようアドバイスを頂いていました。でも、実際プロジェクトが始まってみると、なかなか手が回らず・・・。「活動報告」からどれぐらい支援に繋がるか、の分析も本当はやってみたかったです。また、「活動報告」が支援に繋がるという確証があれば、もっと注力できたのかもしれません。

COMP試飲会とは言うものの、活動報告では試飲会の様子をアップ。より支援者に具体的なイメージを持ってもらえる内容になっている。※参考:活動報告「Tokyo Otaku Mode×COMP試飲会」

【kibidangoスタッフより】
この点については、予め分析の準備をして頂けるようなサポート・アドバイスを強化し、必要に応じて情報をすぐお出しできるような体制を整えてまいります。また、効果的な施策が何なのか、他プロジェクトでの実績も多数ご紹介いたします。

自分たちは間違っていないと思えた「応援メッセージ」の存在

鈴木さん:クラウドファンディングをやって良かったなと思うことの一つが、支援者からのメッセージです。(※kibidangoでは、支援時に応援メッセージを書く欄があります。)支援者の3人に1人ぐらいはメッセージをくださっていたのですが、これがほぼほぼ私たちの情報源になりました。

「一人暮らしで、料理もしません。食事は外食100%。栄養バランスが心配で興味をもちました。3食全てを当商品で代替というよりも、2食位の代替を考えてます。今後、炭水化物を減らしたバージョンや、たんぱく質を増やしたバージョン等を作って頂けたらうれしいです!頑張ってください。」

「Soylentの購入が中々困難な中、日本からも同様のものが出てこないかと待っていました。」

「私はトライアスロンやマラソンをやるのですが、レース前の内臓に負担軽減のため、トレーニング後のリカバリーフードとして、レース中の補給として興味があります。」

単なる応援でなく、具体的にどんなモノを望んでいるか、どんなシーンで使用する予定かといったコメントが届いている。

また、特典のTシャツのサイズを確認した際にも、「達成おめでとうございます!」などメッセージをいただき、心から応援してくれている人がいるということに、本当に元気づけられましたね。COMPについては、社会的意義があると自負してやってきましたが、それは間違いじゃなかったんだなと。

クラウドファンディングの審査を通っているという安心感。

鈴木さん:もし自社の通販だけでやっていたとしたら、ここまで売れていなかったと思います。クラウドファンディングはプロジェクト掲載までに審査があるので、そこを通ったという「安心感」を支援者に持ってもらえる。そのお墨付き感によって、アーリーアダプター以外の人にもリーチすることができたと感じています。

twitterのつぶやきは見逃さない!想定ターゲットには直接アプローチ

相原さん:私たちが想定していた一番のターゲットは、「Soylentが欲しいけど買えない」という人たち。そこで、twitter上で「Soylent」に関してつぶやいている人には直接アプローチしました。普通は企業からのアプローチってスパムだと思ってスルーすると思うのですが、ターゲットが明確だったこともあり、ここからも支援に繋がりました。ここでも、ターゲットに関する自分たちの仮説検証は間違っていなかったんだなと自信になりました。

また、kibidangoの公式twitterのツイートから生まれたコミュニケーションもありましたよ。とにかく、twitterの関連するつぶやきは見逃さないようにしていましたね。

周りの人も含めてチーム。意見を常に聞ける環境に身を置いていた。

鈴木さん:実務は相原との二人三脚ですが、気持ちとしては5人6脚。色んな人の知見を仕入れようと常に心がけています。自分たちの製品コンセプトをしっかり固めているからこそ、興味を持って巻き込まれてくれる人もたくさんいました。

入居しているシェアオフィス「01booster」のメンバーにもアドバイスを求めましたが、その意見は自分たちにとって宝でした。実は、起業した当初はシェアオフィスに入るつもりはなかったんですが、この環境はすごくよかった。内輪だけで考えるのではなく、常に周りの意見を聞ける環境に身を置くのはとても重要だと思います。

今後プロジェクトに挑戦する方に伝えたいこと

相原さん:プロジェクトの商材や目的にもよりますが、達成金額は欲を出さずにハードルを多少下げておいた方がいいと思います(笑)意味なく下駄を履いてしまうと、達成できないリスクが大きくなります。

鈴木さん:自分たちの場合、1ロットの量を純粋に目標にする必要はなく、1ロットの3分の2が捌けるぐらいに設定して、「残りは自分たちで売るんだ」ぐらいの気持ちでいました。kibidangoさんからもアドバイスはあると思いますが、すべてをクラウドファンディングに委ねて目標金額を設定するというのは危険だと思います。

とにかく他のプロジェクトを研究せよ!

相原さん:他社のクラウドファンディングサイトも含めて、自分たちと似ているプロジェクトの研究は必須だと思います。それぞれ上手くいっている理由なども違います。ただ、見ているとプロジェクトの「魅力」を表現し切れていないケースも多いなと感じます。
プロジェクトページでは、どういうお客さんに売れるのかをちゃんと想定して、そのお客さんがどういう幸せ・価値を得られるかまでを表現できないといけないとつくづく感じました。

鈴木さん:自分たちの場合、スポーツの分野での「完全栄養食」はすでにあったので、そこに攻めても勝てないことは分かっていました。そこは早い段階で見極めて、ターゲットを定めていったことも吉と出たと思います。

クラウドファンディングは、市場ニーズがあるかどうかの試金石。

鈴木さん:社内のメンバーや手伝ってくれている人の意見や話を聞くことで、やっと自分たちの製品やプロジェクトが見えてきました。そういう意味では、クラウドファンディングは私たちにとって「試金石」。今後の展開に向けての重要な機会になったと思います。

COMPメンバー株式会社コンプのメンバー(左から、取締役COO・相原さん、代表取締役兼CEO・鈴木さん、取締役CFO・岡田さん)

鈴木さん、相原さん、ありがとうございました!